ここンところまるで本を読んでいない。特に小説類だ。これではダメだと本棚をひっくり返して、十年以上前に買っておき乍らすっかり存在を忘れていた「神州纐纈城」を見つけた。そういや香山滋や海野十三は貪るように読んだけれども、国枝史郎は初めてだ。それで唐突に思い出した佐藤紅緑の「あゝ玉杯に花うけて」も読みたくなって書店に赴いたところ(考えてみれば本屋じゃなくて古書店に行かなきゃ見つかる筈もないんだけどね)、「ナポレオン フーシェ タレーラン」と云う名の書策を発見したので、迷わず購ってしまう。そう、わたくしはボナパルティスト、じゃなくて、ナポレオン周辺のお話が一等すきなのである。

 さてこの書物、初版は2003年だから割と新しい部類に入る。著者は日本人で年季のいった研究家だが、案の定仏文出であった。案の定と書いたのは、文中引用が多々あるのだが、うち著者訳の文体がわたくしに云わせれば、いかにも、と云うやつなのである。大体仏文出の人間にはろくなやつがいない。わけても東大仏文は澁澤やら巌谷やら中条やら魑魅魍魎の巣窟と云ってよい。この鹿島某も東大仏文だ。その出自に恥じぬ、どこかくだけた云い回しや単語を用いて、読んでる方は誠に心地よい。唯一の難点は語尾が単調にすぎて、一文一文のリズムを損なっていることだろう。勿論単調さも徹底すればひとつのスタイルになり得るが、どうにも中途半端なのはいただけない。それはなるほど小さな瑕瑾ではあるけれど、点睛を闕くほどの大事でもあるのだから。
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Contax I + Sonnar1,5/5cm(late). ILFORD DELTA 100
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by y_takanasi | 2009-09-07 20:53 | Sonnar1,5/50


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