読書の冬

 前世紀の末に買った中井英夫の虚無への供物に漸く手を付けた。これを読破すれば日本探偵小説の3大奇作を制覇する。と云っても、他の2作──黒死館殺人事件とドグラマグラを読んだのは学生時代だから、粗筋すらも大方忘れてしまった。もいちど読み返さないといけませんな。そう云えばこの90年代てのは、ひたひたと迫りくる出版不況の中、得体の知れない書策が次々に刊行または復刊された時代でもあった。J.J.ポーヴェールのサド侯爵の生涯なんて、結局2巻以降出たのか?

 ところで虚無への供物、のっけから文体が沁み入るようにステキだ。黒死館みたいな峻酷さはない、はっきり云って俗な言葉遣いだけれど、山口椿と同じ、紙やすりで磨いたが如き流麗さがそこに匂い立つ。直前に読んだ神洲纐纈城が、ネタは面白いのだが文体があまりな為体だったものだから、その徑庭がひときわ光彩を放つと云うものだ。
d0044379_2165493.jpg

Contax II + Biogon2,8/3,5cm T. film unknown
[PR]
by y_takanasi | 2009-12-17 21:07 | Biogon2,8/35


<< 老兵は… 寒い「10月」 >>