写真を撮る

「弘法筆を択ばず」と云う諺があります。これは、名筆は道具に拘らない、左右されない、と一般的には解しますが、わたくしはあえてこう解します、「名手は(これと決まった道具を持っているので)他のものを選ぶ理由がない」

写真(家)にとってカメラとレンズ、そしてフィルムはただの道具ではありません。画家にとっての絵筆どころではない、絵の具やカンバス以上の、画風を左右する、タッチそのものだからです。

あなたがなにがしか心をとらえる写真を撮りたいのであれば、いま望み得る限り、手に入る限り、目的に適った最高の機材を手にしてください。それは、写真の出来の悪さを(安い)機材の所為にしてしまう退路を断つためであり、また、せっかく高い機材を買ったのに、と云うプレッシャーを自分に与えるためでもあります。

写真の基本的なテクニックとは、露出を正しく読むこと、意図的でない手ブレを起こさないこと。ただこれだけです。構図も、被写体の良し悪しも、テクニックや知識とは関係ありません。あとはレンズとフィルムの特性を押さえておけばじゅうぶんでしょう。

基本的なテクニックの他に写真を撮るために必要なものは、あなた自身の感受性です。これは教えて貰うものでも盗むものでもありません。あなたがこれまでに、そしてこれからも育てて行くものです。

これまではともかく、ではこれからどう育てればいいか。できるだけ多くの写真、絵画、映像、そして生の光景(「風景」ではありません)を目にすることです。それが良い絵(光景)かどうかはいまは関係ありません。そのうちどのような絵が(あなたの)心をとらえるかが判ってくるでしょう。

また、いつもカメラを持ち歩く必要はありません。あればあったで役に立つでしょうが、むしろカメラを持っていない時でも良い絵を目にすることができるように、あなたの周囲に常に心を向けていてください。

常に心を向けよとは、心を開いておけと云うことではありません。閉じていたって構わない。あなたが心を閉ざしていようがいまいが、ある光景があなたの心の扉を叩いてくるときは叩いてくるのです。大事なのはその音を聞き逃さないと云うことです。そのときドアを開けるかどうかはあなたの自由です。

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by y_takanasi | 2013-03-09 00:21 | Biogon2,8/35


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