職場の引越に伴い、カビ対策で避難していたカメラ群を持ち帰ってきた。この中にボックステンゴールがあった。ゲルツ社の、ロールフィルムカメラである。ちょっとカメラに興味のある人から見ると、これはピンホールカメラに見えなくもないが、ちゃんとレンズを備えている。フロンターという単玉で、接合ダブレットの色消しアクロマートレンズだ。
ところでクラカメ専科76号の記事に、ツァイス・イコン製のボックステンゴール(1926年の大合併でゲルツ社はイコン社に吸収合併された)は1枚玉で写りもあまり良くない、と書かれていたが、これは筆者が不良品を掴まされた可能性が高い。というのもわたくしが所有する2台のボックステンゴールはともにツァイス・イコン製で、戦前型と戦後型の両方とも、そのレンズは接合ダブレットだからだ。いくらツァイスに技術的自信があるとは云え、1枚玉でしかも画質の悪いものを、のうのうと戦後まで作るとは考えられない。実際のところこの2台とも、よく写るのだ。
シャッターはエバーセットの1速で、およそ1/25くらいだ。当時の感材を考えれば、妥当なところである。近距離撮影では補正のため後群にレンズが1枚追加される。ファインダーは反射式プリズムファインダーで、縦横位置に2つついている。これはゲルツ時代からずっと一緒だ。ボックステンゴールにはベスト判のベビータイプもあった。こちらはフレームファインダーだが、なんともかわいいスタイルである。
自分でプリントするようになって、6x9判はめったに持ち出さなくなった。引伸し器が6x7判までしか対応していないからだ。それでもふと、使いたくなったときは、これまためったに使わないリバーサルを入れている。まあ、モノクロでコンタクトプリントでもいいんだけどね。
Box Tengor II (postwar) FRONTAR-ACHROMAT 9/105. Kodak 100EG