MSオプチカルがレンズの製作まで始めたらしい。スペック1,3/50のRF用標準レンズだ。それも今や幻に近いゾナー型である。ただしゾナー型といっても、4群5枚のいわゆるエルノスター=ゾナー型だ。この構成は中望遠のF2,8クラスにはまだよく見かける。またローライ35RFのゾナー2,8/40も同じ構成だし、かつての京セラコンタックスT/T2のゾナー2,8/38もそうだった。MSオプチカルのそれは後群の貼り合わせ面の曲率を大きくしており、F1,5ゾナーまたはF1,4ニッコールSCのそれを思わせる。
今なぜゾナータイプなのか。MSオプチカルはシャープでハイコントラストなだけが取り柄のガウス型全盛へのアンチテーゼだとしている。かつてシャープネスとハイコントラストを謳われたゾナーが、皮肉にもそれへのアンチテーゼに担がれたのだ。もちろん昔日のシャープネスやハイコントラストと今日のそれらとはレベルが違う。カラーでの性能に特化してきた現代のレンズは、モノクロームでは極端なコントラストを生んで、却って写真の美しさをスポイルしているように思える。MSオプチカルの新レンズがモノクロを主眼としているのかどうかは知らないが、現代ライカレンズですら失ってしまった優しい描写を目指しているのだとすれば、それはそれで良いことだ。
Contax I + Sonnar 1,5/5cm. Tri X