視覚

 目で見た風景と、写真に撮った風景とは、いつも何かが違う。観光地で撮った記念写真なんかを見ると、その思いが強くなる。画角のせいだろうか? 写真のプリントサイズのせいだろうか? そのどれでもないようだ。わたくしが思うに、この違和感が生じるのは、そこに匂いや音がないからだ。われわれは決して目だけでものを見ているのではない。嗅覚や聴覚、時には触覚すら駆使して、風景を「眺めて」いる。だからこの違和感は、想像力の欠如でもない。ありのままの姿を写真にとどめることは、どだい不可能である。写真は存在を視覚作用のみに純化して記録する。われわれはあとからそこに匂いや音を感じようとすることもできるが、記録することはできないのだ。だから視覚以外のすべては記憶である。記憶は今そこにあるものではない。それを喚び起こそうとしない限り、決して立ち現れるものではないのだ。そうして記憶は、どこまでも現−在ではない。そこにギャップが生じ、われわれは違和感を感じる。感興で撮る写真の宿命である。

 もしあなたが、その違和感をできるだけ取り除きたいのなら、写真を撮る際にその風景を目だけで感じることだ。音も、匂いも、肌にあたる風や陽の光すらシャットアウトして、全神経を視覚に集中する。そうして純化された視覚体験は、あるいは特別な世界を見せてくれるかもしれない。
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BESSA R2C + NOKTON 1,5/50(Prominent). Tri X
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by y_takanasi | 2006-10-19 21:01 | NOKTON1,5/50


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