50ミリ

 釣りはフナに始まりフナに終わる。写真は50ミリに始まり50ミリに終わる。今では35ミリや28ミリが標準となって、それどころかズームレンズが当たり前の時代だから、もはや「標準レンズ」という言葉自体が死語と化しているが、二昔前くらいまではレンズ交換式カメラにくっついてくるのは50ミリレンズだった。つまり写真を撮ろうという人はまず、50ミリの画角からすべてを始めたのである。

 50ミリレンズというのは不思議な玉で、ネガ上に写し出されるパースペクティブからすれば人間の視覚よりずっと広い、いわば広角レンズである。しかしライカの登場以来、いや45度前後という画角で云うとその前の中判、大判の時代から、このパースペクティブのレンズは標準レンズと呼ばれて来た。人間の両眼視野のうち、ある程度事物をそれとしてしっかり認識できる範囲からすると、50ミリ(45度)は少し狭く、35ミリ程度が適切だから、ますます標準の意味が判らない。恐らくこのネーミングは、カメラボディに「標準で」くっついてくるレンズ、というほどのことなのだろう。

 よく云われるように、50ミリ玉は広角風にも望遠風にも撮れる万能レンズである。かつては引伸しにも使えたから、ますますもってユニバーサルなレンズだった。そんな八面六臂の活躍ぶりが、却って一部の人たちには中途半端なレンズとして映ってしまったらしい。そこでスナップ派はより広角へ、ポートレイト派は中望遠へと離れて行ったわけだ。しかし立ち位置の自由さえあれば、50ミリは依然として万能レンズである。すなわち使い手の思惑によっていかようにも使える、ということだ。それは写真全般の基本に通暁しているということであり、またそれに拘泥しない発想と表現力を有っているということでもある。それゆえこれを自在に使いこなせてこそ、その人は優れたフォトグラファになれるのだろう。
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Contax II + Sonnar 1,5/5cm. Tri X
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by y_takanasi | 2007-06-06 18:57 | Sonnar1,5/50


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