フレクトゴン2,8/35は東独カール・ツァイスが初めて世に送り出した一眼レフ用逆望遠レンズであり、パリのP.アンジェニューに遅れること1年の1951年のことだった。シュツットガルトの分家、西独ツァイスが距離計連動カメラに拘泥しているうちにいち早く戦後のカメラの流れを捉えていた東独ツァイスは、コンタックスSで一眼レフカメラのスタンダードを作ってしまい、その後も管理経済社会の中、60年代までどうにかリードを保ち続けたのだ。
それゆえに、と云うわけでもないが、東独ツァイスが光っていたのは1950年代から60年代前半までだった。この間に誕生したツァイスレンズは、どれも現代でさえ通用する品質を有っているし、カメラだって──多分に趣味的だけれど──使えないわけじゃあない。少なくとも20ミリから1000ミリまでの魅力的なレンズラインナップは、各種のマウントアダプタやベッサフレックスのお陰で、まだまだ現役でいられるってことだ。
Contax S + Flektogon 2,8/35 Tri X