で、コンタックスだ。こいつのシャッターは縦走りのメタルフォーカルプレンである。戦後ほぼすべてのFPシャッターが縦走りで金属製になったことを考えると、1932年当時のこの機構は先見的だった。しかもこのシャッタはよくあるドラム式シャッターとは違って、先幕と後幕の間隔を予め決定した上で、これを同時に走らせる。丁度大昔のスリット式FPシャッターと同じ原理だ。だから他のドラム式シャッターのように、先幕より後幕が少し速く走ってしまったり、その逆になったり、することがないので露光ムラが発生することもない。露光時間は幕速とスリット巾によって決定され、この2つのセッティングを僅か1枚の円盤の角度によってコントロールする。もちろんこの先には頭の痛くなるようなギアの配列があるわけだが、この複雑で強迫的なシステムもすべて利用者の利便に奉仕しているのであって、決して設計者の独善的な嗜好によるものではない。しかもこれだけ手が込んでいながら、その対衝撃精度は比較的高く、より構造のシンプルで壊れにくいと云われているライカよりも(特に距離計精度において)頑丈なのである。実際わたくしはクロコンもバルナックもM3も床に落としたことがあるが、狂いが出たのはライカのほうだった! だからキャパが戦場にクロコンを持ち込んだのは、賢明なことだったのだ。
Contax II + Topogon 4/25. Tri X