本家テッサーの35ミリレンズは、1942年に試作品が作られてから40年以上も経った1980年代後半にようやく登場した。ヤシカTシリーズというオートフォーカスカメラに搭載されたのがそれだ。F3,5とF2,8の2種類があったが、主に使用されたのはF3,5である。恐らく、というかやはり、この辺がテッサーの最適値なのであろう。さすがに誕生から80年も経っての新設計だけあって、コンパクトAFカメラの中でも抜群の写りをする。逆光にも滅法強い。巷にはこのレンズを摘出してライカネジマウント化するサービスもあるそうだ。
デジカメが興隆を恣にしてフィルムカメラの売上げが激減する現状に鑑みるに、おそらく今後、テッサータイプの35ミリレンズが登場することはあるまい。それどころか、テッサータイプそのものでも新しいレンズが生まれてくる気配はない。だとすれば、20世紀の写真レンズ史は、まさにテッサーの時代だったとも云えなくなかろうか。(了)
Kyocera T proof (Tessar 3,5/35 T*)