gaulois

 わたくしの身の周りにあるキカイは、カメラもくるまも萬年筆もドイツ製なのだが、別段ドイツが殊更にすきだって訳じゃない。ドイツ音楽はあまりすきじゃないし、文芸や哲学となるとむしろ嫌いなほうだ。ひとつにはステロタイプなドイツ観、つまり生硬で理屈っぽい点に肩が凝る。それは工業や科学、医学などにはうってつけなのだろうが、人間活動を多角的且つ肯定的に捉えるには不向きな姿勢だ。いや、ドイツ語圏からはフロイトとユング、それとクラフト=エビングと云った精神分析学の泰斗が輩出したではないかって? そうだ、それこそ正にドイツ的な思想の賜物なのだ。つまり彼らは、神の視点から人間を理解、規定しようとしているのだ。だが残念なことに、人間はどう足掻いても神にはなれない。そこにフロイト精神分析学の限界があり、ドイツ哲学の悲劇がある。勿論それら決して逃れ得ぬ人間の不完全性からの解脱の試みが、ある種の美しさを齎していることは事実だ。とりわけそれが工業製品の中に昇華する時、喩えようもない陶酔感を味わうこともある。しかし文芸や哲学の中に、わたくしはそれらを見出すことができない。わたくしはもっと泥臭い、地べたを這うが如き身悶えの中に、人間の美しさを見るからだ。それ故常に人ありきで始まるフランス文学と哲学のほうに、より共振を感じるのである。
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Pentacon super + Sonnar 2,8/180. Tri X
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by y_takanasi | 2009-04-14 22:22 | Sonnar2,8/180


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