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Triotar 4/8,5cm

 トリオター4/8,5cmはコンタックスレンズシステムの中で、唯一のトリプレットレンズである。その登場は古く、コンタックスI型と同発の1932年だった。一般にトリプレットは画面中帯域での残存収差と、広角寄りでの四隅の乱れとが顕著に現われる傾向にあるとされる。これらの欠点は特に中判の広角トリプレットで目立つことが多い。しかし35ミリ判の、それも長焦点レンズとなると、それもだいぶ目立たなくなるか、ほとんど感知されないレベルに落ち着く。そのため開放の明るさを抑えれば、このクラスでは十分な描写力を持つレンズとなる。

 このトリオターもそのひとつだ。まだコーティングの施されていない戦前のレンズだが、構成枚数が少ないお陰で抜けも良く、発色も素直である。そしてその性能が優れていた証には、ゾナー8,5サンチと並び戦後もリファインされてコンタックスの終焉まで生産され続けたのだ。

 興味深いことに、F4の85ミリクラスのトリプレットには名品が多い。多いと云ってもあと2つだけだが、ライツのエルマー4/9cm(3枚玉)と、コダック・エクター4/90(エクトラ用)である。このどちらも生産本数は少なく、市場で見かけることはあまりないものの、傑作トリプレットとして評価は高い。
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BESSA R2C + Triotar 4/8,5cm, ILFORD DELTA 400
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by y_takanasi | 2005-06-23 06:00 | Triotar4/85

1本勝負

 カメラを弄り始めた頃は、露出の記録を克明に取っていた。いったい、それがなんの役に立つのか、あるいは役に立てるのかも知らずに、ただそうすることが恰好いいのだと思っていた。意味がない、というか、意味を持たせることが自分にはできない、と気付いてからはすっぱり止めた。絵を見ればおおよその絞りは判るようになったというのもある。もちろんほんとの理由は、わけが判らなくなって飽きたからだ。

 同じように昔はやたら交換レンズを携帯していた。とっかえひっかえレンズを付け替えて、1本のフィルムで3本も4本もレンズを替えて撮ったこともある。だがじきにそれも飽きた。というよりどのコマをどのレンズで撮ったのか判らなくなってしまったからだ。あれこれ画角を変えて撮るなら、ズームレンズでも持てば良い。ズームが嫌いで単焦点レンズを使うようになったのだから、これと決めた1本で撮るのが潔いというものだろう。実際1本勝負にしてから画角で悩むことはあまりなくなった。割り切りや心構えと云う点からも、交換レンズは持ち歩かないほうがいい。そうして散歩はもとより旅行に行くときも、わたくしは1本勝負である。ああ、ハコは2台だったりするけどね。
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Kiev II + BK 2,8/3,5cm, Tri X
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by y_takanasi | 2005-06-22 06:11 | B.K.2,8/35

スナップ

 スナップというのは昔から写真の一ジャンルで、カルティエ=ブレッソンやら伊兵衛やらが確立させて以来、今でも結構な人々がこれに興じているのだが、恐らくこれほど悪趣味な写真のスタイルもない。中には気取ってキャンディッド・フォトなんてぬかす輩もいるが、要は盗み撮り、隠し撮りである。自然体を収めるためとは云え、とにかく被写体に気付かれないようにこっそり撮るのがスナップ写真だ。その点ではトイレや更衣室の中を密かに撮影するのと変わりはない。かろうじて犯罪にならない程度のものであって、良いご趣味なわけもない。

 それにしてもなぜこっそり撮るのか。あるいはすり師みたいにすばやく撮ろうとするのか。プロのモデルさんは撮られることを意識しないで自然なポーズをとることができるが、町中のシロートのモデルさん、つまりその辺をうろうろしている一般人に、そんな芸当を期待したってどだい無理な相談だ。あるいはプロは撮られるのが商売だが、シロートは撮られるために町を歩いているのではない。スナップフォトグラファーはそこらで談笑したり物思いに耽っていたり何かに夢中になっていたりする人々をフィルムに捉えたいのだから、気取られて不自然な格好をされたり逃げられたり、難癖をつけられたりしないように、こっそり撮る、盗み撮りするのである。

 それにしてもきょうびスナップは難しくなった。なに、風景スナップは変わりないが、人物スナップのことだ。肖像権やらプライバシーやらで、そうそう気軽にひとを撮ることができなくなった。世知辛い世の中である。警察を呼ばれてフィルムを没収されたという話も聞く。もちろん日本での話だ。別にそれで金儲けしようてんでもあるまいし、ましてストーキングしているわけでもない、自意識過剰というものだろう。わたくしなんかいくら撮られようが気にもならない。自分で云うのもなんだが、割とフォトジェニックな恰好をしているらしく、カメラを抱えて町を歩いていると時々カメラが追っかけてくる。え、ああ、これも自意識過剰ですかそうですか。
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Leica DIII + Russar MR-2, ILFORD DELTA 400
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by y_takanasi | 2005-06-18 04:47 | RUSSAR MR-2

感想

 ひとに写真を見せたとき、一番閉口するコメントは、「何を撮ったのか判らない」というものだ。モチーフ主義の弊害である。あるいはモチーフは特定のオブジェだと決めつけている先入主の現れである。

 結構です、判らなければそれはそれで。でも、絵画や詩と同じで、そもそも「判る」必要があるんでしょうか。写真は感興を惹き出すものなのだから、ピンと来なければ「つまんないね」の一言だけ頂ければよろしい。それとて感興のひとつには違いないのだから。
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Contax II + TYPE X1, ILFORD DELTA 400
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by y_takanasi | 2005-06-17 05:48 | Angenieux TYPE-X1*

85ミリ

 85ミリには、50ミリ以外で初めて使った単焦点レンズと云うこともあって、特別な思い入れがある。その85ミリがヤシコンのプラナー1,4/85と、旧コンタックスのゾナー2/85だったからなおさらだ。プラナーを使っていた頃はリバーサルばかり撮っていて、その描写と云うよりも発色ばかりに目を奪われていた。これと云ってろくな絵が残っていないのはそのせいもあろう。自分に色彩センスがないからと云うのもあるけれど、今でもカラー写真に心動かされることは少ないし、また撮るのも苦手だ。

 ゾナー2/85を手にしたのはちょうどモノクロに移行した頃で、最初に撮ったねこの絵(このブログの前のほうに掲載している)がいたく気に入って、現代機材を処分するきっかけともなった。絞り開放での甘い描写の中に、ピントの緩やかな山を表出して前後に溶けてゆくモノのカタチを見たとき、そもそも写真とは何であるかの答えの一端に触れたような気がしたのだ。

 爾来ゾナー2/85はわたくしにとって最初の「良いレンズ」となって、またそれを凌ぐレンズに出会ったこともない。いや、ただ1本あるとすれば、それはそのゾナーの最終進化形である、コンタレックス用ゾナー2/85であろう。ガウスタイプがどのように進化し、解像度と明るさを増したところで、このゾナータイプの最高傑作を超えることはない。
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Contarex super + Sonnar 2/85
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by y_takanasi | 2005-06-14 05:42 | Sonnar2/85

RFカメラに35ミリを

 レンジファインダーカメラには35ミリがよく似合う。わたくしは50ミリのほうがすきだし、よく使うけれど、それでも一番似合うのはやっぱり35ミリだろう。古い距離計連動カメラだと外付けファインダーを使うことになるし、距離合わせも目測のことが多いから、距離計がついてなくてもいいんだけれども、あればあったでいざと云うとき頼りになるので、まあ、あるに越したことはない。そうして一眼レフには85ミリをつける。昔の報道カメラマンの基本形だ。一眼レフ用の35ミリも何本か持っていたが、スナップに使うときはいちいちピント合わせなんかしていないので、一眼レフである必要もないっちゃあない。実際、出番もめっきり減って、幾つか売却したものもある。

 正直に云うと、わたくしは35ミリの画角が苦手だ。あの微妙な広がりが未だになじめないのだ。だいたいここだと見当をつけてフレーミングすると、余計なモノが周りに入る。あともう何歩か寄ればいいのだろうが、気づいて修正している間に被写体は逃げ去ってしまう。どうせフレーミングしてもダメだとばかりに、ノーファインダーで撮った絵のほうが良かったりする。35ミリはなかなかに難しい。
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BESSA R2C + Planar 3,5/35, ILFORD DELTA 400
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by y_takanasi | 2005-06-13 05:31 | Planar3,5/35

テッサータイプの35ミリレンズ(その6)

 本家テッサーの35ミリレンズは、1942年に試作品が作られてから40年以上も経った1980年代後半にようやく登場した。ヤシカTシリーズというオートフォーカスカメラに搭載されたのがそれだ。F3,5とF2,8の2種類があったが、主に使用されたのはF3,5である。恐らく、というかやはり、この辺がテッサーの最適値なのであろう。さすがに誕生から80年も経っての新設計だけあって、コンパクトAFカメラの中でも抜群の写りをする。逆光にも滅法強い。巷にはこのレンズを摘出してライカネジマウント化するサービスもあるそうだ。

 デジカメが興隆を恣にしてフィルムカメラの売上げが激減する現状に鑑みるに、おそらく今後、テッサータイプの35ミリレンズが登場することはあるまい。それどころか、テッサータイプそのものでも新しいレンズが生まれてくる気配はない。だとすれば、20世紀の写真レンズ史は、まさにテッサーの時代だったとも云えなくなかろうか。(了)
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Kyocera T proof (Tessar 3,5/35 T*)
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by y_takanasi | 2005-06-12 05:22 | T-proof (Tessar)

テッサータイプの35ミリレンズ(その5)

 いっぽうシュナイダーのクセナゴンは扱いに困るレンズだ。周辺の流れがとにかく激しい。同じく開放での描写に疑問符がつく新ビオゴンがf5,6にも絞れば優れた描写をするのに比べ、これは絞り込んでも改善されない。最初からトリミングを前提に設計されたような感じがする。このクセナゴンは、ディアックスというフォス社のレンズ交換式レンジファインダーカメラのレンズである。カメラ同様、あまり市場では見かけないようだ。
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Diax Ib + Xenagon 3,5/35
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by y_takanasi | 2005-06-11 05:08 | Xenagon3,5/35

テッサータイプの35ミリレンズ(その4)

 もうひとつ、オランダ唯一の光学企業、オールド・デルフト社製のミノールもこれまた稀少でばか高いレンズだが、適度に低いコントラストと鋭すぎないシャープネスで穏やかな写りをする。四隅の破綻も少なく実用的だ。被写体の明暗差が少ないと眠くなる傾向があるので、Wニッコールほど万能とは云えないけれど、味わい深いものがある。トライXなどのコントラストの高いフィルムと組み合わせるといいかもしれない。
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Contax II + Minor 3,5/3,5cm
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by y_takanasi | 2005-06-10 22:59 | Minor3,5/35*

テッサータイプの35ミリレンズ(その3)

 この対極にあるのがアンジェニューX1だろうか。パリのピエール・アンジェニュー社のレンズで、同社はシネカメラ用のレンズで名高いメーカーだ。ズームレンズも早い時期から手がけている。このタイプX1は、絞り開放では強烈なハロを伴って、まるでソフトフォーカスレンズのような写りを見せる。5,6も絞ればだいぶシャープさを増してくるが、全体的にソフトな描写で決してコントラストも高くない。絞っても見た目の深度は浅く、パンフォーカスで使うのはほぼ無理と云って良いだろう。使い方の難しいレンズだが、ぴったりはまるとなかなかに得難い絵が作れる。
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BESSA R2C + TYPE X1
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by y_takanasi | 2005-06-09 08:43 | Angenieux TYPE-X1*