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ЮПИТЕР-6

「オリンピア」ゾナー2,8/18cmは、1936年の始めに登場して以来、1980年代までほとんどその構成を変えずに生産が続けられた稀代のレンズだ。最初はコンタックスバヨネットマウントで、続いてフレクトスコープ対応となり、戦後にはM42を始めとしてエキザクタやプラクチナ、ペンタコン6マウントでも生産された。西独ではこれを少しアレンジして、コンタレックスマウントで出している。構成はF1,8のエルノスターに似ており、第1群が凸の単エレメント、第2群は厚い接合トリプレットの凹メニスカスであり、絞りを挟んで後群が両凸の単エレメントになっている。この配置は日本光学がニッコールP2/8,5cmと、2,5/10,5cmを作るときにも採用された。空気境界面は6つだからコントラストも程よく、コーティングされた戦後のタイプはさらにヌケが良い。

 取り扱い上の欠点はなんと云ってもその重さだ。古いものだと鏡胴は総金属製だし、なにしろ巨大なガラスが詰まっている。重さも見た目もミラーレンズクラスである。それからこのサイズでプリセット絞りというのも結構めんどくさい。径が大きく、長い筒なので、絞り込むときに手を移動させなければならないのだ。

 さて、ここにあげるのはこの東独ゾナーの流れを汲む、というか恐らくコピーそのものの、ソビエト版ゾナー2,8/180だ。かの地での呼称はユピテル6、いったいどういう根拠で番号がつけられたのか判らないけれど、ユピテルシリーズではゾナー1,5/5cmコピーのユピテル3に次いで若い番号が振られている。これがソ連にとっての重要度、あるいは「ソビエト化」された順番を表しているのだとしても、まあ、頷けるものだろう。

 見た目はソリッドで、ある種床の間の壷のような風情でもある。押し出しは本家同様強烈だ。ゾナーが臼砲だとすれば、これは突撃砲である。もっとも光学系以外の工作がいい加減なところは他のソビエトレンズと似たようなもので、カメラにマウントすると三脚台座があらぬ位置に来る。これは本家と違って固定式だから、実質三脚に乗せては使えない。その辺の不便は割り切って使うしかあるまい。もともとはゼニットM39マウントだから、M42TMカメラで使うにはアダプタを必要とする。これがまたただのネジリングだから不便なことこの上ない。これらの不便さを耐え忍べるかどうかが、ソビエトカメラを愛せるかどうかだ。もっとも、愛せるからこそ忍べるのかもしれないが。
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PENTAX MX + JUPITER-6(2,8/180). NEOPAN 400 PRESTO
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by y_takanasi | 2006-01-28 19:17 | JUPITER-6*

Weitwinkel Doppel Anastigmat 4,5/4cm

 ヴァイトヴィンケルドッペルアナスチグマットです。この強迫的な名前のレンズは、フーゴ・マイヤーの戦前の広角レンズで、主にエキザクタ用に供給されたものと思われます。開放値F4,5と暗いので、磨りガラスでピントを合わせるのは困難でしょう。めんどくさいので現代では目測で使うに限ります。40ミリというのは広角と呼んでいいのかどうか大変悩むところですが、標準レンズが58ミリなので、相対的にはおっけいなんじゃないでしょうか。ツァイスがとりあえずコンタックスに供給した、ビオター4cmとはワケが違います。

 マイヤーはこの後ヘリオプランという、名前だけは明るそうな広角レンズを出しますが、こいつもスペックは同じ4,5/4cmでした。ようやく35ミリになったのは、レトロフォーカスタイプのプリマゴンF4,5であり、明るさが2,8に達したのはずうっとのちのオレステゴン29ミリであります。
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EXA ver.4 + Weitwinkel Doppel Anastigmat 4,5/4cm. AIKO LIGHTPAN 100 SS
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by y_takanasi | 2006-01-26 19:29 | W.D.A.4,5/40

整理整頓

 思い切って機材をそれなりに処分したら、だいぶ身が軽くなったような気がする。や、そうは云ってもまだ50台以上手許にあるんですがね。それでもここんところまるで手も触れていない、あるいは使うこともないだろうカメラやレンズを奉公に出すと、なんとなく肩の荷が下りた気分になれるのだ。やっぱり機械は使ってなんぼのものだから、使われないまま戸棚の中や押入れの奥で埃をかぶってゆくのを見るのは忍びない。奉公先でかわいがってもらえることを切に願うのであった。
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OLYMPUS 35DC (F.Zuiko 1,7/40). Kodak GOLD 200
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by y_takanasi | 2006-01-25 20:29 | OLYMPUS35DC*

Primoplan1,9/58

 こちらは58ミリのプリモプランF1,9。58ミリビオターよりもほんの少しだけ明るい。戦前は普通絞り式で、戦後プリセット式に改良されたが、ビオターのように巨大にはならず、依然コンパクトなままだ。このためエクサに装着してもまったく違和感を与えない。最短撮影距離は0,6m。この点でもビオターに勝っているのだから、マイヤーといえども侮れない。と云うか、マイヤー自体、もっと見直されても良いレンズメーカーだ。もっとも現在では、写真用レンズは作っていないのだが……。

 マイヤーの高速レンズはこのあと、ダブルガウス型のドミロン、そしてオレストンへと受け継がれ、コントラストとシャープネスを増して行った。だが、優しい描写をするこのプリモプランもなかなかに捨て難い。──まあ、そんなこと云ってるから機材が増えていくんだよね。
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EXA500 + Primoplan1,9/58. NEOPAN 100 SS
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by y_takanasi | 2006-01-23 03:44 | Primoplan1,9/58

Domiron 2/50

 マイヤーの標準レンズで最初に出たオーソドクスなダブルガウス型レンズが、このドミロン2/50だ。オレストン1,8/50が出るまでの間、最上級レンズとして君臨したと思われる。写りはまあまあといったところで、可もなく不可もない。単純なシャープネスだけで云ったら、テッサー型のプリモターのほうが上かもしれない。

 鏡胴はかなり図太く、また独特のカタチをしている。絞りは外部レリーズオート式だ。ただし手動切り替えリングがついている。近接は34サンチと、結構寄れるのがポイントだ。このあとのオレストンが33サンチと、マイヤーの標準レンズはツァイスに比べて10サンチも近寄れるのがミソである。

 ドミロンはオレストンに比して希少性が高いためか、割合に市場価格は高額だが、コストパフォーマンスで云えばオレストンのほうが断然良い。それゆえどちらかと云うとコレクターズアイテムになるだろう。
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EXA500 + Domiron 2/50. NEOPAN 100 SS
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by y_takanasi | 2006-01-21 20:17 | Domiron2/50

Primoplan1,9/75

 この絵は以前も掲載したものだけれど、kinoplasmatさんのprimoplanのぐるんぐるんを見てみたいというリクエストに応えて再掲してみた。再掲といっても前回のは同プリのスキャンだったが、今回はバイテンに焼いたやつをスキャンしている。

 プリモプランは戦前からVPエキザクタやライカに供給されていたマイヤーの高速レンズで、エルノスター風の構成を持っている。焦点距離は58ミリとこの75ミリ、それに105ミリがエキザクタ66用に存在した。1,9/75の戦前の価格は205RMで、それだけ出せば標準レンズつきのキネエキザクタが買えるほど高額だった。この辺の価格設定はコンタックスに対するゾナー2/8,5cmに似ている。1954年のカタログでは330RMとなっていて相対的には安くなったものの、シャハトのトラヴェナー2,8/85よりも倍近く高く、廉価版レンズメーカーとして知られるマイヤーとしては最高級の部類に入るレンズだった。

 描写性能はご覧の通り悪くはない。というか癖玉のひとつだ。開放では非常に甘くてどこにピンが来ているかもよく判らないほどだが、少し絞ればシャープさを見せ、そうしてボケはぐるんぐるんになる。このぐるぐるを面白いと見るかどうかは好みの問題だし、それがまた評価にも繋がるところがクラシックレンズの愉しみだろう。この手のぐるぐるは主被写体を強調することにもなるので、そういった使い方をするのがまず穏当だと思われる。ちなみに58ミリではぐるぐるは出ないようだ。
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EXAKTA RTL1000 + Primoplan1,9/75 V. NEOPAN 100 ACROS
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by y_takanasi | 2006-01-19 21:06 | Primoplan1,9/75

uber alles in der welt

 ZMレンズのドイツ本国生産版の2本がようやくお目見えするようだが、その値段がまた腰の抜けるようなシロモノだった。ゾナー2/85はアポズミクロン2/90並みだし、ディスタゴン2,8/15はエルマリット2,8/21とほとんど変わらない。今までさんざんライカ現行レンズのばか高さをコケにしてきたけれど、結局本国で作るとこの値付けになるということか。まあツァイスはいつだって最高品質のものを最高のお値段で供給してきた前歴があるから、オドロくようなことじゃないのかもしらん。しかしこれは高い。高すぎる。コシナ製とのギャップがあまりに大きい。15ミリはともかく、85ミリなんかは常用の範囲内なのだから、コシナに下請けに出すなりしてもっと安くしてほしかった。なんにしてもこれで、ツァイスが30年ぶりに出す2/85というスペックのレンズには、そうおいそれと手を出すわけにはいかなくなった。もっとも、名前はゾナーでも構成はプラナーだから、ゾナー好きのわたくしとしては、それほどひどく落胆しているのでもないのだが。
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Contax II + Biotar 1,5/75 T. Tri X
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by y_takanasi | 2006-01-15 00:05 | Biotar1,5/75

Nikkor-P Auto 2,5/105

 なんだってわざわざ古いタイプのレンズを探し出してきて悦に入るのか、これはもうただのビョーキでしかない。最初のFマウントニッコールオート105ミリは3群5枚のゾナー型で、ニッコールP2/8,5サンチや「オリンピア」ゾナー2,8/18サンチと似たような構成になっている。わたくしはこの貼り合わせトリプレットの部分が意味もなくすきだ。ただ単に分厚いガラスのかたまりであるという魅力の他に、それがある意図でもって整形された3枚のガラスをくっつけてできたシロモノである、という点に、理由もなくわくわくする。第2世代のニッコールオート2,5/105は、この手間のかかるトリプレットを止めて空気間隔を空けたエルノスター=ゾナー型になってしまったから、たとえ──というか事実──性能が良くなったとは云え、モノとしての魅力はわたくしにとっては失われているのだ。コレクター、あるいは光学ガラスフェチの戯言である。
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Nikon F2 + Nikkor-P Auto 2,5/105. NEOPAN 100 SS
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by y_takanasi | 2006-01-14 01:34 | Nikkor2,5/105(1)

かむばっく

 MSオプチカルがレンズの製作まで始めたらしい。スペック1,3/50のRF用標準レンズだ。それも今や幻に近いゾナー型である。ただしゾナー型といっても、4群5枚のいわゆるエルノスター=ゾナー型だ。この構成は中望遠のF2,8クラスにはまだよく見かける。またローライ35RFのゾナー2,8/40も同じ構成だし、かつての京セラコンタックスT/T2のゾナー2,8/38もそうだった。MSオプチカルのそれは後群の貼り合わせ面の曲率を大きくしており、F1,5ゾナーまたはF1,4ニッコールSCのそれを思わせる。

 今なぜゾナータイプなのか。MSオプチカルはシャープでハイコントラストなだけが取り柄のガウス型全盛へのアンチテーゼだとしている。かつてシャープネスとハイコントラストを謳われたゾナーが、皮肉にもそれへのアンチテーゼに担がれたのだ。もちろん昔日のシャープネスやハイコントラストと今日のそれらとはレベルが違う。カラーでの性能に特化してきた現代のレンズは、モノクロームでは極端なコントラストを生んで、却って写真の美しさをスポイルしているように思える。MSオプチカルの新レンズがモノクロを主眼としているのかどうかは知らないが、現代ライカレンズですら失ってしまった優しい描写を目指しているのだとすれば、それはそれで良いことだ。
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Contax I + Sonnar 1,5/5cm. Tri X
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by y_takanasi | 2006-01-11 05:43 | Sonnar1,5/50

Primotar 3,5/180

 マイヤーのプリモター3,5/180は、その名前からしてテッサータイプのレンズだ。しかしエレメント配置はテッサーを前後逆にしたものである。この形のレンズは他に見たことがないが、ペッツバール型の変形、特にシュタインハイルのアンチプラネットに似ているとも云える。

 鏡胴の造りは非常に頑丈である。ゾナー2,8/180よりは一回り小さいが、回転式の三脚台座もついていて手抜かりはない。この三脚台座が当時の東独望遠レンズに共通の縮緬結晶塗装仕上げで、これがまた無駄に美しい。こんな余計な加工も、今ではとんと見られなくなってしまった。マウントはエキザクタバヨネット式だが、珍しい外爪である。このためトプコンでは使うことができない。

 マイヤーの180ミリはこれが最後のモデルで、それ以前にはテレメゴール5,5/180があったきりだ。このあと300ミリや500ミリは新製品を出しているので、180ミリを手がけなくなったのは、ツァイスとの兼ね合いであっただろう。もちろんツァイスにはゾナー2,8/180という、その重さを除けば今でも優秀なレンズがあった。以後、マイヤーは超望遠レンズと、普及型標準レンズにその主軸を移し、標準レンズはツァイスを押しのけて、ほとんどのペンタコンカメラに装備されることになる。
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EXAKTA RTL1000 + Primotar 3,5/180. NEOPAN 400 PRESTO
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by y_takanasi | 2006-01-10 05:42 | Primotar3,5/180