<   2007年 12月 ( 11 )   > この月の画像一覧

解像度と云う名の神

 カメラを長く弄っていると、段々と中判や大判にシフトして行く人が割合に多い。わたくしはこれを、趣味が嵩じたのだと見るのではなく、単に老化が進んだ結果だと見ている。つまり、老眼だ。35ミリ判の繊細さに目がついて行けなくなって、同一サイズで比べた場合拡大率の低い、つまり見かけ上より精緻にみえる中、大判に惹かれるのだ。まあ、目が悪くなるのは仕方ないとして、ただ大きいことは良いことだ、と云わんばかりの中、大判愛好家には疑問がある。わたくしはフォーマットの違いは解像度の差ではなく、表現媒体の違いであるということに意義を見ているので、この手の被写体に関わりない中、大判愛好を蔑視する。単位面積あたりの精緻さを求めるこの思考は、つまり、もっと画素数を!と叫んでるデジカメユーザと変わりないし、かつて見られた(今も)レンズ解像度信者と全く同じ精神構造だ。それが例えば、病理学写真であったり、測量であったり、高解像度であることに意味のある利用法ならまだいい。大体において解像度信者の撮る写真とやらは、高解像度である必要が全くないくずのような写真である。あるいはカミソリのようなピント面に命を賭けたが如き、写真のためのレンズなのかレンズのための写真なのか判らないゲテモノを量産する。アマチュア写真と云うより、もはや児戯である。こんな児戯を見て喜んだり貴んだりする輩が多いせいで、日本の写真界は底辺からどんどん腐ってきているような気がする。
d0044379_1352878.jpg

Contax II + Topogon 4/25. Tri X
[PR]
by y_takanasi | 2007-12-29 13:53 | Topogon4/25

生まれいずる不幸

 ネタックスは不運なカメラだ。抑もの生い立ちはスーパーネッテルIIIであり、II型までの蛇腹を捨てて、固定鏡銅にランクアップしたものなのだが、欲張ってレンズ交換式にしたため、元々怪しかった立ち位置が更に怪しくなってしまった。大体スーパーネッテルはコンタックスの普及版として誕生したのだから、その後継者はレチナを目指しても良い筈だった。でもここでキュッペンベンダーか誰かの意地が出てしまったのだろう(キュッペンベンダーはブラコンの生みの親だけれど、ツァイス・イコンの進路については色々とマチガイを犯している)、フラグシップ機と同じようなスペックを要求して競合させるという愚を呈した。結果は散々だった。カメラが月給の数ヶ月分もするような時代に、コンタックスよりほんの僅か安いだけの普及版とやらが売れるわけがない。ネタックスの存在意義はだから、来るべきコンタックスIVの生産テストにしかなかった。実現しなかったコンタックスIVは、シュヴェンクカイルプリズムより対衝撃精度の高いドレーカイルプリズムを再び採用して、測距光学系の一端を交換レンズ側に持たせようとしていたのだ。商業的に大失敗に終わったネタックスは、交換レンズも2本しか供給されず、おまけのその主力レンズがニハチのテッサー5cmだった──ここでわざわざ明るい玉を採用すること自体が、性格の曖昧さを如実に顕現している──ものだから、今日ではコレクションとしての価値しかない。
d0044379_0162114.jpg

Nettax + Tessar 2,8/5cm. Tri X
[PR]
by y_takanasi | 2007-12-26 00:22 | Tessar2,8/50

2,8

 ニハチのテッサーは、恐らくツァイスが生んだレンズの中でも最高の駄作である。特に戦前のF2,8は、相当ひどい。周辺の流れは目に見えるほどだし、中央部の解像力すらサンハンに遠く及ばない。ツァイスはあくまでこれをゾナーの廉価版として位置づけており、ただ通常のテッサーより明るいという点にしか、存在意義はなかった。だから戦後ニハチのテッサーは東西どちらのツァイスもコンタックスのラインナップから外してしまったし、SLR用として復活した際は主力レンズというのではなく、脇役に過ぎなかった。確かにコンタフレックスでは標準レンズだったものの、普及版SLRにはこれで十分という判断が働いたのであろうし、それでも尚忸怩たるものがあったとみえて、最新のコンピュータ解析によって徹底的に改良されて甫て、性能的に安定したものとなったのである。ルドルフの危惧はここにおいて漸く解消されたと云えるだろう。とゆうことでニハチのテッサーを買うなら、60年代に入ってからのものが良い。
d0044379_0105738.jpg

Nettax + Tessar 2,8/5cm. Tri X
[PR]
by y_takanasi | 2007-12-25 00:11 | Tessar2,8/50

欲しいのは?

 たまに欲しくなるカメラボディはあるけれど、欲しいレンズとなるとこれがもう、ほとんどない。コレクションに不可欠なコンタックス用ビオター2/4cm、これは時々見かけるが、ファインダーがないのでいつも見送りだ。他にはM42のシュピーゲル・オプイェクティフ4/500と5,6/1000。まずまったく使う機会はなさそうだけど、東独イェナツァイスの最高峰として押さえておきたい。他には、うん、もうほんと、何もないな。あ、マクロプラズマート2,7/3,5cm? 勿論コンタックスマウントの。リストでしか見たことないや。
d0044379_018520.jpg

Contax II + Topogon 4/25. Tri X
[PR]
by y_takanasi | 2007-12-24 00:18 | Topogon4/25

キエフとクロコン

 写真工業の12月号でTさんが相変わらずのT節を炸裂させているのが面白い。彼はクロコンの讃美者だから、その流れでキエフを褒めるのは当然だ。今号の記事ではキエフ、と云うよりイエナコンタックスの誕生経緯が描かれているのだが、これはかつてフンメル氏が残した説に若干の詳細を付加するものである。結論から云えばキエフはやはりコンタックスのコピーである。より正確に云うと、コンタックスのコピーであるイエナコンタックスそのものである。だからその出自は紛れもなくドイツでありツァイスであって、フェドとはワケが違うのだ。そんなキエフだから、性能がいいのは当たり前だ。レンズだってツァイスの設計でツァイスの技術者が指導したのだから、ライツやその見よう見まねで作ったフェドなんかよりずっと優れている。ソビエトの凄いところは、その技術をちゃんと継承し、作ってもらった生産ラインを拡大しながら、実に40年も維持発展させ得たことだ。何も新しいものを作るばかりが技術力ではない。日本人は独創性に欠けるコンプレクスがあるせいか、この辺りを軽視しがちである。

 それにしてもTさんがことあるごとにM型ライカをこき下ろしているのは、いつもながら痛快だろう。即ち一眼式RFカメラは1936年のクロコンをもって完成を見たのであり、M型はとどのつまり、クロコンのエピゴーネンでしかない。ライカの自殺とは云いすぎにしても、降伏に等しく、機能とデザインにおいて完全にクロコンの軍門に下ったのである。だからわたくしは、M型ライカのMはマゾヒスティクのMだと思うのだ。
d0044379_0234295.jpg

Contax II + Topogon 4/25. Tri X
[PR]
by y_takanasi | 2007-12-23 00:24 | Topogon4/25

米国製

 アメリカ製の35ミリ判カメラで、米軍に制式採用されたものとなると、これがわたくしの知ってる限り5つしかない。カードン、コダック35、ボルシイ、シグネット、アーガスC3だ。エクトラを戦場で使うのは色んな意味で勇気が要るとして、コダックの無数の小型カメラはまるで選外だった代わりに、ナゼかアーガスの大衆機が入ってる。カードンはライカのコピーから始まったし、ボルシイの生みの親であるボルスキーはアルパを設計した人だから、生粋の米国生まれという意味では、コダックとアーガスだけということになろうか。

 コダック35はのちにRF版も作られたけど、その原型は目測レンズシャッターカメラにしては異様にばかでかい。これだけのサイズがあればドイツはM3を、日本はニコンSPを作れたのに、なんだってまたレンズ付きフィルムに毛の生えた程度なのか。それに比べればシグネット35はずっとコンパクトで、日本のRFコンパクトカメラと伍してひけをとらない。最短距離は2フィートと、日独のそれを上回るスペックだ。遅れをとっているのはシャッターそのもので、低速は1/25だしセルフコッキングでもない。しかしそれがいかほどのことだろう。テッサータイプの名玉エクターF3,5はそれらの欠点を補ってなお余りある。シグネット35は確かに、アメリカ製小型カメラの傑作なのだ。
d0044379_3281146.jpg

Kodak Signet 35 (Ektar 3,5/44). Kodak SUPER GOLD 400
[PR]
by y_takanasi | 2007-12-17 03:29 | Signet35*

ちんまい

 カメラ熱が小康状態に入って、やっとのんびりできると思っていたら、いつの間にか新顔が2台、増えていた。前々から少しは気になっていた、コダックシグネット35とボルシイである。アメリカの35ミリ判カメラには、エクトラ以外どうも面白みに欠けるシロモノしかないと思っていたのだが、この2つはなかなかいけている。まずサイズがとても小さい。アーガスC3やコダック35を見ていたので、普及版でもくそでかいカメラしかアメリカにはないのか、と落胆していたところ、コニカC35くらいに小さかった。これは望外の喜びである。しかも最短が2フィートと、コンパクトカメラの常識(あくまでフィルムカメラの)を超える短さだ。釣り用のカメラはこれでほぼ決まりである。欲を云えばセルフタイマーが欲しかったが、まあそんなモノは外付けでどうにかなろう。それにしてもわたくしのカメラ削減計画はどうなったのか。
d0044379_1774157.jpg

Kodak Signet35 (Ektar 3,5/44). Kodak SUPER GOLD 400
[PR]
by y_takanasi | 2007-12-12 17:08 | Signet35*

つづき

 で、コンタックスだ。こいつのシャッターは縦走りのメタルフォーカルプレンである。戦後ほぼすべてのFPシャッターが縦走りで金属製になったことを考えると、1932年当時のこの機構は先見的だった。しかもこのシャッタはよくあるドラム式シャッターとは違って、先幕と後幕の間隔を予め決定した上で、これを同時に走らせる。丁度大昔のスリット式FPシャッターと同じ原理だ。だから他のドラム式シャッターのように、先幕より後幕が少し速く走ってしまったり、その逆になったり、することがないので露光ムラが発生することもない。露光時間は幕速とスリット巾によって決定され、この2つのセッティングを僅か1枚の円盤の角度によってコントロールする。もちろんこの先には頭の痛くなるようなギアの配列があるわけだが、この複雑で強迫的なシステムもすべて利用者の利便に奉仕しているのであって、決して設計者の独善的な嗜好によるものではない。しかもこれだけ手が込んでいながら、その対衝撃精度は比較的高く、より構造のシンプルで壊れにくいと云われているライカよりも(特に距離計精度において)頑丈なのである。実際わたくしはクロコンもバルナックもM3も床に落としたことがあるが、狂いが出たのはライカのほうだった! だからキャパが戦場にクロコンを持ち込んだのは、賢明なことだったのだ。
d0044379_535107.jpg

Contax II + Topogon 4/25. Tri X
[PR]
by y_takanasi | 2007-12-08 05:36 | Topogon4/25

いちばーん

 一番安心して使えて、気分も昂揚し、手に馴染むカメラ、とくればもちろん、コンタックスである。念のため断っとくが、ヤシコンではない。ウチにはバヨネットとねじマウントのライカも存在するが、信頼感という点ではRFコンタックスに遠く及ばない。操作性、レンズ、堅牢さ、どれをとっても一番だ。市場では不当に貶められているけれど、それは大衆が愚かだからであって、安くていいものを買いたたけるという面からすると、このまま大衆は愚劣であって欲しいと切に願うくらいである。
d0044379_5364283.jpg

Contax I + Sonnar 1,5/5cm. Tri X
[PR]
by y_takanasi | 2007-12-07 05:37 | Sonnar1,5/50

模型とカメラ

 経済コンサルタントで、著名なカメラコレクターでもあるリチャード・クー氏が、モデラーでもあるのは周知の事実だ。抑も彼がカメラに凝り出したきっかけが模型の写真を撮ることだった。それもリアリティ溢れる、いわば情景写真である。と云ってもそれは1/35に代表されるようなAFV系ではなく、航空機モデルだ。生憎わたくしには、そういった絵を撮りたいと云う欲求が無いのだが、かつてAFVをメインに作っていた頃は、情景写真を撮りたいと思っていた。だからタミヤの「パチッ」は隅から隅まで眺めていたし、バーリンデン氏にまつわる一連の議論も注意深く観察していた。

 まあ、若かった(青かった)のである。今現在、模型の写真を撮るだけの機材も機会もあるけれど、もはや情景写真を撮りたいという欲求もなく、ただブツ撮りとしての絵をたまに撮ってるくらいだ。それもウェブ用の絵だからして、ほとんどデジでの撮影である。そんなワケで、こう見えてもわが家で一番個体別稼働率の高いカメラは、オリンパスの某デジイチだったりする。だってそれしか選択肢ないんだもん。
d0044379_61711100.jpg

Nikon F2 + Micro Nikkor 2,8/55. Tri X
[PR]
by y_takanasi | 2007-12-04 06:18 | Micro Nikkor2,8/55