<   2009年 03月 ( 12 )   > この月の画像一覧

いずみ

 ここでは滅多に言及してないけれど、わたくしは萬年筆コレクターだった。過去形なのは、今はほとんど蒐集していないからであって、カメラと違って日々使うものが凡そ固定されてしまった以上、食指が動かないからである。しかし普段使いとは云っても、仕事はPCに向かってばかりだから、萬年筆はおろか筆記用具の出番はほとんどない。せいぜいボールペンくらいだ。萬年筆を使うのは、専ら家の中か茶店で書き物をするときだけとなる。どうにも物足りないのだが、それも仕方のないご時勢なんだろう。
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Dollina II (Radionar 2,9/5cm). Tri X
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by y_takanasi | 2009-03-31 20:30 | Radionar2,9/50

まにあのみち

 需要がないからと云ってしまえばそれまでだが、洋の東西を問わず大衆車や旧東欧のくるま、戦前の旧車などのミニカーなりプラモデルなりがほとんど商品化されてない。模型店に行ってもカタログをみても、スポーツカーやレースカー、あるいは所謂DQNカーばかりだ。それでもまだミニカーはラインナップに幅が見られるけれど、キットとなるとほぼ絶望的である。ビッグ3の扱いは比較的広範に亘る米国のメーカー(ERTLやLINDBERGなど)でもスチュードベイカーやデューセンバーグといった戦前ものにはほとんど手を出していないし、ナッシュやランブラーなどの戦後の大衆車も無視されている。ヨーロッパではHellerやMatchboxが割にマイナーな車種を扱っているが、オースチンやモーリス、パナール、DKW果てはAWEやIFAとなると、皆無に等しい。マニア受けするキットで人気の高いチェコのメーカーでも、自国のくるま(シュコダやタトラ)には興味ないようだ。ダチアやVAZ、GAZともなると、ミニカーですら見つけるのが難しい。一番最初に書いたように、需要がないからどこもキット化しないのだろうが、大衆車ファンのわたくしとしてはどうにも、つまらないのである。日本のメーカーなんか最悪だよ。
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Zorkii-3 + Summarit 1,5/5cm. Tri X
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by y_takanasi | 2009-03-29 19:54 | Summarit1,5/50*

おふらんす

 高校大学と仏文に惑溺してしまったからか、時々英語を仏語読みしてしまうことがある。大体英語の表記と発音の規則など難解この上ないから、却って仏語式のほうが読み易いのだ。とは云え、耳で聞いたフランス語を文字に置くのは結構難しい。例えばルノー。ルはreかreuくらいしかないのでいいとして、オーが難物だ。Renauld、Renau、Renaux、Reneaux、Reneau、Renot、Renos、これ全部ルノーと読める。ラテン語で書くならRunouだけで済むと云うのに。くるまついでに思い出したが、元がフランス語のChevroletも、全く知らない人が見たらチェヴロレットとしか読みようがない。それから鼻母音とリエゾンの聞き分けも厄介だ。例えば未来のイヴの作者、ヴィリエ・ド・リラダン。この名字はアダム島の住人て程の意味で、Villier de l'Isle-Adamと書く。後半は日本語にすると4文字だが、真ん中の島(イル)が定冠詞ルと固有名詞アダンに引っ張られてどこにも見当たらなくなる。ところで仏文学者ですら時々間違える輩がいるが、ヴィリエ・ド・リラダンはそれ全体で姓である。昔の大統領、ジスカール・デスタンGiscard-d'Estaingもジスカールが名前な訳ではない。もうひとり、やはり作家のピエール・ド・マンディアルグもまた間違われることがとても多い。なまじ前半にピエールなんてファーストネームっぽい言葉がついてる上に、真ん中にドが入ってるもんだから、半端にフランス語を知っているとピエールが名前でド・マンディアルグが姓だと勘違いしてしまうらしい。名前のピエールはPierre(石と云う意味)だが、ピエール・ド・マンディアルグはPieyre-de-Mandiarguesと書く。ピエイル・ド・マンディアルグとでも書けば勘違いもなくなるのであろうか。ちなみに名前はアンドレAndréだ。
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Dollina II (Radionar 2,9/5cm). Tri X
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by y_takanasi | 2009-03-26 20:13 | Radionar2,9/50

さんまい?

 ホロゴンと云う特殊な例を別とすれば、3枚玉は廉価版の代表格だ。135判に限っても、トリオター、ノバー、トリオプラン、ドミプラン、カッサー、ラジオナー、シンター、ランター、数え上げれば切りがない。よくまあこの割かし単純な構成に次から次へとバリエーションを付けたものである。ソビエトなんかそれでも横着して名前をTで統一してしまったし、ライツはハナからトリプレット専用の名称は用意しなかったが、皮肉にもエルマー4/90はトリプレットのほうが名声高い。トリプレットが発明された当時はまだ大判の時代だったから、焦点距離は長かった。フォーマットが小型化するにつれて距離も短くなってゆくが、単に短くすれば良いと云う訳にはいかず、トリプレットは次第に忘れ去られてしまう。いや、忘れ去られた訳ではない。単に主役の座をテッサーやダブルガウス型に譲っただけで、ベーシックレンジでの主力となったに過ぎない。むしろその少ない自由度の中で明るさと画角を稼ぐには、やたらガラスの枚数を増やして力ずくでねじ伏せるよりも困難を極めただろう。60年代も後半になるとそれまで長焦点玉に比べて見劣りがしていた標準玉でも、遜色ない性能を見せるようになる。もっとも、新たなカメラ大国として伸張して来た東洋の島国ではトリプレットはそれほど流行らず、入門機にまでテッサーを奢って来たるべきズームレンズ時代までを過ごすことになろう。
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Dollina II (Radionar2,9/5cm). Tri X
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by y_takanasi | 2009-03-23 21:57 | Radionar2,9/50

うつくしき

 わたくしの美に対する考え方は、もうずうっとポオの呪縛に捉えられたままだ。もちろんポオは文芸について語り実践したのだが、その思想はそのまま全ての美に適用され得るとわたくしは考える。そう、それが言葉であろうが音楽だろうが映像だろうが、それこそ味覚嗅覚の世界であったとしても、美の基本概念は同一不変である。表し方──と云うよりも顕れ方が異なるだけだ。そして常に、それを捉えるのは人間であり、その他の生き物でもなければ神でもない。それゆえ美には至高も普遍もなく、人間がこの世に現れてこのかた、常に美しかったものなど存在しないのだ。だが──そう、だが、それが何だと云うのだろう。個々の人間が全ての時代を生きることが出来ない以上、──いや仮に全ての時代を生きることが出来たとしても──、全ての美は個々の現在に内在する。それは過去でもなく未来でもない。そして唯一、この意味に於いて美は普遍となるのだ。
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Contax II + Sonnar 2/8,5cm T. Tri X
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by y_takanasi | 2009-03-22 21:25 | Sonnar2/85

A la recherche des mots perdu.

 2007年に新訳が出た小説を読んでいて、面白い表記に出会った。前世紀末から吹き荒れる言葉狩りへの一種の抵抗と云えなくもないが、同時にそれら蛮行が実にいい加減で感情的な我が儘に過ぎないかが推し量られる表記の仕方だ。そこにはこう印刷されている、聾、盲、唖。もちろんこのままでは出版自主規制に抵触するから、ルビが振ってある。みみしい、めしい、おうし。なんとも莫迦げたことに、一般的な読み方を少しく文語調に変えただけで、規制をパス──もしくはパスするに足る客観的根拠を与えられるだろうと云う、思惑である。わたくしはこの姑息な手段が悪いと云いたいのではない。この程度の云い換えで揺らいでしまう言葉狩りの論拠は、奈辺にあるのかと云うことだ。縁なき衆生は度し難し。
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Super Nettel I (Triotar 3,5/5cm). Tri X
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by y_takanasi | 2009-03-17 20:56 | Triotar3,5/50

持久力皆無

 メタボだダイエットだと周りがかまびすしくなって来た。無駄な医療施策のひとつであるメタボ検診もぞろ始まる。わたくしは「不幸にして」こいつにひっかかりそうにない。なんて書くと石もて逐われそうだが、医療現場の見聞の限りでは、少なくとも検診基準に引っかかる程度がむしろ健康体なのである。抑も肥満と云うのは飢餓に対処するための自己防衛機能であって、それ自体はなんら責められるべきものではない。何でもそうだが、度を過ぎると良くないだけだ。わたくしはよく羨ましがられるほどの痩せ型であるが、要は飢餓で真っ先にくたばる体のタイプってことである。これは恰も、大陸軍のようなものだ。短期決戦には強いが、無補給持久戦には弱い。かつて大陸軍が無敵を誇ったのには、兵士の愛国心の他に、その迅速な行動力があった。他国兵士の歩速1分60歩に対し、フランス軍は80歩。ウルムの会戦において、吾行軍のみによりて勝てり、とナポレオンをして云わしめた進軍速度だ。これは訓練もさることながら、携行物資を必要最小限にとどめたお陰でもある。そう、ナポレオン軍の補給方針は現地調達主義なのである。現地調達てのは手っ取り早く云えば徴収、掠奪に他ならないから、現地人の協力がなければ上手く行かない。自国内や解放者として迎えられた地域でこそ成立するのであって、ただの侵略者と看做されれば大打撃を蒙るのは必定だ。スペインとロシアで彼が失敗したのはこのためだ。

 ナポレオン以前の戦争は傭兵戦でもあり、ひとつの作戦あるいは戦役に必要な物資は全て携行、運搬し、要所要所に備蓄しつつ行軍した。これが兵站、兵站線である。だから軍事行動の多くは敵の兵站を遮断し、撃破することを目的とし、敵主力の物理的撃破を必ずしも要しなかった。なにしろ傭兵だ、彼らに飢えてまで戦う気概はないし、戦意喪失させるには補給を断つのが手っ取り早い。だがナポレオンに兵站は必要なく、常に敵主力の包囲(つまり兵站線の遮断だ)と撃滅を主眼とした。作戦に必要な物資は全て行く先々でかき集めれば良く、それによる身軽さが作戦行動の要でもあった。だから現地で思うように物資を徴収できないと、途端に軍は弱体化する。それが判っていたからこそ、クトゥーゾフやロストプーチンは焦土作戦を採ったのである。

 そんな大陸軍的性質の体なもんで、何かのはずみで食事が取れないとなると、わたくしは一気に活力を失う。体が自転車操業しているようなものだ。
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Contarex super + Planar 1,4/55. ILFORD XP2 super
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by y_takanasi | 2009-03-13 21:33 | Planar1,4/55

やつあし

 わたくしいまだに虫がすきで、閑にあかせて虫類図鑑を眺めてたりするのだが、それでも余り興味の湧かないジャンルと云うものはある。例えば甲虫とか鱗翅目とか。世の虫好きとは違い、わたくしはコガネムシとかアゲハチョウには大して興味を惹かれないのだ。わたくしにとって虫とはトンボやバッタ、そしてクモである。特にクモは面白い。わたくしが見たクモの中で一番美しいのはアオオビハエトリだ。体長5、6ミリ程度の小さな徘徊性のクモだが、緑色のびろうどのような体で、コバルトブルーの縁取りがある。カワセミが渓流の宝石ならば、アオオビハエトリは地べたの宝玉であろう。ハンミョウなんか目じゃないのだ。造網性のクモならジョロウグモである。その名の通り、紺、黄、紅の派手派手しい妖艶さは他の虫の比ではない。

 ではかっこいい(子供たちは美しいものよりもカッコいいもののほうがすきだ)クモとなると、これはジグモの一族から選ぶことになろう。例えばオオクロケブカジョウゴグモなんかは精悍で力強さに溢れている。体長は4サンチ近くもあって、歩脚も入れると10サンチを優に超える、地中性としては最大級の日本産クモ類である。残念ながら琉球列島にしか棲息しないので、本土人が目にすることはまずない、そんな本土人にお誂え向きなクモはやはりアシダカかオニグモということになろうか。大半の人にとってはかっこいいと云うより不気味極まりないクモであるが、いずれも益虫であって、大体日本産のクモ類はそのほとんどが衛生害虫を駆除する、人間に大変優しい虫なのである。とゆうわけで、夜のクモは敵に似てても殺すな、とわたくしは云いたい。
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Nikon F2 + MIR-24N (2/35). Kodak SUPER GOLD 400
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by y_takanasi | 2009-03-12 20:42 | MIR-24N

がらす玉

 ドイツのカメラ用レンズと云うと、ツァイスとライツと云うことになるのだろうが、それ以外にもレンズメーカーは幾つかがあった。その筆頭がシュナイダーで、クセノンやクセノター、クセナーなど、かなり品質の高い玉を世に送り出している。他にもマイヤー、ローデンシュトック、シュタインハイル、エンナ、ルートウィヒ、キルフィット、アストロなどがあって、手頃な価格でそこそこ程度の良いレンズを作っていた。特にマイヤーはツァイスを押しのけてペンタコンカメラの標準レンズに採用されたし、戦前の望遠レンズではキルフィットやアストロが有名だ。またシュタインハイルのカメラはひどかったがレンズは第一級品だった。日本のカメラ用レンズメーカーと云えば、シグマとタムロンだろう。特にシグマは安い割に性能がいい。多分にサードパーティ製交換レンズ市場の動向を睨んだ結果、早くからズームレンズに力を入れたお陰でその性能はしばしば純正ズームを上回り、ブランド信仰に惑わされない名手の多くが愛用している(らしい)。タムロンはそれよりランクは落ちるけれど、コストパフォーマンスは結構高いほうだと云えるだろう。レンズ専業メーカーとて侮るなかれ、リソースの全てをそこに注ぎ込むことが出来るからこそ、時に優れたモノを作ることも出来るのだ。
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Lordomat SLE + Travetar 3,5/35. FUJIFILM SP400
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by y_takanasi | 2009-03-10 19:56 | Travetar3,5/35

藤村

 ひと昔、と云うかふた昔よりもさらに昔、髪を上げると云うのは女性にとって成人になることだった。もっとずうっと昔は貴賤を問わず髪を下ろしていたから、これは髪を結い上げるようになってからの話で、それも町人や士族クラスの風習であろう。それにどうやら貴族──公家連中はずっと下ろしたままだ。成人とともに髪を上げるのは大陸でも同様で、基本的に彼女らのヘアスタイルに前髪と云うものはない。前髪を垂らすのは子供の証みたいなもので、特に少女の前髪をあちらでは劉海と云う。今やもう髪を上げるとは云わなくなったが、下ろすほうはたまに使われる。無論、仏門に入ることである。
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Kiev 4am + B.K. 2,8/3,5cm. ILFORD DELTA 100
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by y_takanasi | 2009-03-06 20:26 | B.K.2,8/35