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他人の目

 昔、煙草を吸わない友人が一箱、いつも携帯していた事がある。聞けば台の確保に使うのだそうだ。パチンコの事である。日本は不思議な国で、パチ台にしろカフェ席にしろ、あるいは鉄道の自由席でも、手荷物をほいと置いて席を離れられる社会だ。よほどのことがなければ盗まれる事がない。もっともそれがモラルによるものなのか、あるいは周囲の監視という抑止力によるものなのかは判然としない。生得的に良くない事と認識しているからなのか、まわりの人に目撃されて通報されるのを恐れているからなのか、結果は同じでもこの二つは大きく違う。巨大な災害が起こる度に、日本では略奪暴動がほとんど起きない(まったくではない)ことに海外から驚かれるが、果たしてそれは個々人のモラルに由るものなのだろうか。単なる同調圧力ではないのか。ひと気のない赤信号を平然と渡る人を見かける度に、ふとそんな事を思い出す。そう云えば未就学児童を連れた母親が、点滅する青信号の横断歩道を無理矢理渡って、きちんと歩道に立ち止まった子から叱責される光景もしばしば見かける。願わくば、その子にはその時の気持ちを忘れないでいて欲しい。

 ところで冒頭のパチンコの話である。わたくしはもう何年も足を運ばないので現状を知らないが、今でもパチンコ店内は喫煙可なのだろうか。
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Topcon Super D + Primoplan1,9/58. Tri X
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by y_takanasi | 2014-12-31 18:04 | Primoplan1,9/58

青鞜

周囲を見渡してみると、ラノベ(ライトノベル)が市民権を得てだいぶ経った。もっとも単語として普及したのがこの十年余りと云うことで、ジャンルとしてはもっと昔から存在していたと認識する。80年代後半からのコバルト文庫とか角川スニーカー文庫あたりだ。当時は少女小説と云うよりも少女まんがの小説版と云った位置づけもしくは認知のされようだったと思う。まんがは描けないがまんがのようなお話を書きたい人たちのレーベルとでも云おうか。今ここでラノベや少女小説の定義をどうこうしたい訳ではないので、詳細には立ち入らない。わたくしがふと思ったのは、日本において表現形式の新風はどの時代でも女性作家から吹くのではないか、と云うことだ。70年代から80年代初頭にかけて、「少女まんが」が単に内容が少女向けと云うだけでは括れないジャンルを創造したことを思い起こす。だがしかし、近代以前となると、傍証は現代日本の萌えとエロの原型百貨店とも云うべき「源氏物語」と、いくつかの日記文学くらいしか思いつかないので、武家政治が女性の物書き活動を妨げたと云うのでもない限りは、この仮説もあやふやなままに終わってしまいそうだ。
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Contax II + Topogon 4/25. Tri X
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by y_takanasi | 2013-06-08 19:27 | Topogon4/25

滅び

 閉店や廃線間近の店舗や路線が、陳腐に「別れを惜しむ」と形容される集団によって一時の盛況を見せる度に、最後の輝き、あるいは徒花と云う言葉を思い出す。その集団の中に本来のファンは、ほんの僅かしかいないだろう。大部分は「別れを惜しむ」イベントが大好きなだけのお祭り人間である。彼らには往古の有様などどうでもよく、まして復興の可能性にはまったく興味も持たず、ただ目の前の消えゆく光景をもって感傷に浸ることができれば満足なのだ。いや、感傷と云うよりは感興と云うべきか。それは哀しみではなく、愉悦なのだから。彼らはただその対象を食い潰すだけで、あるいはその後に来るかもしれない再生には決して力を籍さない。彼らはその意味でもハゲタカであり、ハイエナである。彼らが欲しいのは、その場限りの美しい想い出だけなのだ。これが桜大好きな日本人のメンタリティなのであろう。
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Contax II + Sonnar 1,5/5cm. Tri X
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by y_takanasi | 2013-05-25 20:47 | Sonnar1,5/50

転た寒心すべき

 石井研堂の「東京市騒擾中の釣」と云うエッセイがある。明治38年9月5日の国民大会(ポーツマス講和条約反対国民大会)に始まる警察焼打、いわゆる日比谷焼打ち事件のただ中に、浅草公園の禁漁池が一大鯉釣り大会の相を呈したさま等を綴っているのだが、その冒頭の文章に「違警罪者街上に充ち、転た寒心すべきこと多かりし」とある。問題はこの「転た(うたた)」と云う副詞だ。既に文語となって久しいが、「何とも云えず」「酷く」くらいの意味であろう。かねて折口信夫が推察するには、本来は「いよいよ」「ますます」と同じく状態の進行する様を表していたらしく、それが特に嫌悪、マイナスの方向へ寄って行った。「うたて」も同根であり、平安の頃には「うたて・あり」「うたた・あり」が一般的で、「うたて・し」は卑俗な用例だと云う。

 さて、そんなややこしい枕から何を引っ張って来るかと云うと、これは先年訪れた新田金山城の茶店址の絵だ。これこそ「すさまじ」の一語であろうか。
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Contax II + Biogon 4,5/21. Tri X
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by y_takanasi | 2013-04-07 19:16 | Biogon4,5/21

さくら

桜の花のように潔く散りたい、なんてことをのたまう輩が古今大勢おりますが、桜の花びらほど敷石にこびりついて離れないこと往生際の悪いものもありません。

なお、これは桜ではなく。
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Contax II + Biogon 4,5/21. Tri X
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by y_takanasi | 2013-03-31 21:34 | Biogon4,5/21

まいどのことながら季節感なし

 わたくしはクリスマスと云う宗教行事はすきだが、クリスマスを名乗る商業行事は嫌いだ。あの浮ついた雰囲気に気持ちが悪くなる。大体毛唐の習慣に便乗して要りもしないサービスやらモノやらを押し付ける連中も気に入らないし、それを有り難がって押しいただく大衆にも反吐が出る。でもよく考えると、これは祭りであってハレの世界なのだ。きっかけは盆でも降誕祭でも構わない。それが日本古来のものであるかどうかは関係ない。お祭りでさえあれば良いのであって、日本人はとにかく祭りがすきな民族なのだ。そう考えるとまあ、このばか騒ぎも眺めてるぶんには悪くはないかな、と思えてくるのが不思議だ。勿論、そこに参加したいとは思わないけれど。
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Leica M3 + Summar2/50. ILFORD DELTA 400. MGW 1K. (2005)
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by y_takanasi | 2010-01-01 11:43 | Summar2/50

ぜんっぜん

 全然と云う言葉が本来否定形を伴うべきことは誰でも知っている。しかし今日のように肯定否定問わず単なる強調詞として使われ出したのは、そんなに新しいことでもない。もう20年以上も昔に少しく気になって、古い辞書をひっくり返してみたことがあるが、終戦直後の国語辞典には既にこの用法が記載されていた。昭和初期の辞書は生憎と検べられなかったものの、大正の字引には肯定時の用法は載っていない。だから恐らくはこの頃、大正デモクラシーなんかに乗っかって言葉も民主主義化したものと思っていたところ、大正8年のとある高名な歴史学者の謹話の中に、肯定文の強調で用いられているのを見つけてしまった。当時の若者ならばいざ知らず、幕藩時代生まれの老学徒である。とあればもうこの時代、全然の用法は現今と同じであったと考えても良いだろう。何しろこの学者、皇孫殿下の御学問所御用掛まで務めたほどの人物であり、先の文章はその迪宮殿下成年式の折に発表されたものなのだ。金田一秀穂の言葉を引くまでもなく、言葉は常に変容し進化する。何も新奇な使い方を発明する必要もないが、殊、全然については否定形を伴えと目くじら立てる真似なんかしなくても、全然良いじゃないか。
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Contax II + Sonnar 2/5cm. Tri X
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by y_takanasi | 2009-05-20 20:25 | Sonnar2/50

さくら

 サクラサクと云うのは嘗て試験合格の電報クリシェだった。その反対がサクラチルだが、これはよく考えると聊か奇妙である。当たり前だが散る前には咲かなければならない。だから第一報がサクラサクで、ごめんやっぱ間違いだったわ、とサクラチルが来るならまだ話が判る。最初からチルのはどうかと思う訳だ。それにしても櫻はよくよく見るとなかなかに不気味な植物である。花自体は別段どうってことはないのだが、あの木肌が気味悪い。そして満開の桜並木。安吾でなくたってそこに鬼気迫るものを見出すことができよう。大体樹木全体が花で覆われているなんて、こんな怪体な植物があるだろうか。ところで警察の紋を櫻の御紋と間違えて書く人がいるけれど、あれは櫻ではなく太陽だ。つまり勲章にもある、旭日章である。櫻が紋に入っているのは自衛隊だ。
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Contax II + Sonnar 2/5cm. Tri X
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by y_takanasi | 2009-05-03 19:40 | Sonnar2/50

糸引

 統治にメディアの支配は必須だと気付き、それを実行したのがナポレオンで、徹底したのがナチスであり、それなりの成功を収めたと云えるのがソビエトだ。そして今なお強力に押し進めているのは中国と北朝鮮だろう。一方この国では為政者のメディア統治能力は無能に等しい。勿論隣の国みたいに力ずくで統制すれば良い訳ではなく、そうと気付かせずに操作するのがとても下手だ。どちらかと云うとメディアに支配されている感があり、しかもそのメディアがまた低能愚劣である。これでは一億総白痴化しても無理はない。メディアを──そして勿論為政者をも支配しているであろう唯一の存在は、官僚機構である。そうして困ったことに、近代国家の病巣は政治家ではなく、この官僚組織にあるのだ。でもそんなこと、200年以上も昔からルソオが警告してるんだがな。
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Dollina II (Radionar 2,9/5cm). Tri X
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by y_takanasi | 2009-04-27 20:18 | Radionar2,9/50

呑気なことで

 メディアも世間も騒ぎ過ぎだっての、Tクンの件。ただの公然猥褻、もしかしたら公妨と迷惑条例違反だろ。おれは酔っぱらい嫌いだし、ガクセーみたいなハメの外し方はどうかとも思うが、ヤクをやった訳でも詐欺を働いた訳でもまして人を殺した訳でもないのに、このお祭り騒ぎ。何か別の重大な事象から目を逸らす為に煽り立てているようにしか見えない。まあ、普段からの悪人が悪事を働いても大して叩かれないのに対し、好人物がちょっとでも悪さをすると盛大に袋だたきにされるってゆうアレか。ホント、マスコミと大衆は豚以下だ。
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Contax II + Biogon 4,5/21. RDPII
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by y_takanasi | 2009-04-24 20:43 | Biogon4,5/21