モノクロ写真の最大の愉しみはプリントにある。僅か24×36ミリのネガから大きな絵を作るのはなかなかに愉しい経験だ。わたくしはバイテンにしか伸ばさないけれど、気に入った絵はもっと大伸ばしにしてみたくなる。
よく暗室作業で一番楽しいのは印画紙を現像液に浸けて、絵が浮かび上がってくるときだと云う。確かにその瞬間もわくわくするものであるが、ある程度やっているともう大した感動は呼び覚まさない。それよりもわたくしが一番愉しみにするのは、定着液から引き上げて明るい水洗場に持って行ったときだ。期待した通りの陰影、調子がそこに現われているのを見たときの感慨は他に代え難い。
わたくしの使っている引伸し機はLPLのVC6700で、散光式だ。集散光式に比べて露光時間が長くなり、調子もやや軟調に傾くと云うけれど、ネガ傷が目立たなくなるのでこちらを選んだ。埃が入るのを極端に嫌うので、ネガキャリアは素通しのものを使う。これはノートリミング用に枠を削って大きくしてある。引伸しレンズは専らローデンシュトックのアポロダゴンで、それまで使っていたフジノンに比べると柔らかく、階調を再現しやすい。少し硬めに焼きたいときはフジノンも使っている。
印画紙ははじめからバライタ紙を使っていた。レジンコート紙のほうが簡単(と云っても使ったことがないから判らない)だと云われるけれど、仕上がりの艶を考えるとバライタに限る。カーリング対策がちょっと面倒なだけだ。
このブログに掲載しているモノクロのうち、黒枠が出ているものはプリントをスキャンしたもので、あとはフィルムスキャンである。自動ゴミ除去機能のため、フィルムスキャンした絵は若干ソフトな絵になってしまっている。
Contax II + Biogon 2,8/3,5cm, Tri X