わたくしは写真という言葉が嫌いだ。英語のphotographのどこを見ても写も真もない。写真は光で絵を描くものなのだから、光画と云ったほうがしっくりくる。でも日本語でphotographは写真だ。ひとにいちいち説明するのも面倒だし、気取ってると云われるのも厭なので、やむなく写真という言葉を使う。
だいたい写真という言葉から連想されるように、写真は真実を写すのだろうか。必ずしもそうでないことは、幾つもの報道機関が実証している。写真は真実を写さない。あえて認知哲学風に云えば、写真は真実を作り上げる。そこに真実を見るか、虚構を見出すかは、すべてわれわれの一存にかかっている。だからわたくしはそれを光の絵と呼ぶ。そもそもこの目に映っているものだって、光の描き出す絵なのだ。
Contax II + Biogon 2,8/3,5cm, ILFORD 400 DELTA