以前にも書いたが、わたくしはスクエアフォーマットが苦手だ。写真に限らず、正方形の画面を構成するのが昔から大の不得手だった。しかし正方形の画面と云うのは、古来よりそう一般的なものではない。建造物を飾るレリーフにしろ、イコンにしろ、大衆絵画、映画、TV、まんが、書物──そのほとんどが長方形である。何より黄金比と云う存在が、正方形よりも長方形に美を見出そうとしていたことの証だ。唯一、正方形が標準となっているのはレコードのジャケットである。
大体、正方形は図形としては比較的安定したカタチではあるが、心理的に頗る不安定なカタチでもある。つまり四辺いずれもが等価である為に、いずれを下にしても構わない──どこまでも転がってゆきそうな感覚に襲われるのだ。じゃあ写真のタテ位置はどうなんだって? うん、アレは理屈で考えると不安定なのだが、どういう訳か正方形よりは安定した感じを受けるんだよな。なぜだろう。
Flexaret V (Belar 3,5/80). Tri X